王道学園小説
『僕と君』
B.l/王道/学園/全寮制/15禁
※以下b.Lです。苦手な方はBack please
登場人物はココから …
【目次】
01.1ヶ月遅れの入学…
02.一難去ってまた一難
籐夜は非常に困っていた…
「……」
「………」
「…………」
「……………あの?」
「あっ、ごめんごめん!!そうか、今日やったんか。俺は都築虎次郎、よろしくな」
しばらく互いに見つめ合ったままでどちらとも声をかけようとはしない。
そんなに見つめられると恥ずかしくなってきた籐夜は我慢できなくなり、視線をそらして声を掛けた。
すると見つめ合っていたことに気づいた虎次郎はニカッと白い歯を見せて自己紹介を済ませると手を差し出してきた。
籐夜も手を差し出して握手を交わすが、虎次郎は籐夜の手を握りしめたまままた顔をジーッっと見てきたのだった。
そう何度も見られてくると恥ずかしくなってくる。
籐夜は虎次郎の手を離そうとするが、思ったよりも力強く握りしめられているため解けない。
何となく嫌な雰囲気がした籐夜は顔を上げると、すぐ傍まで虎次郎の顔が迫っていた。
「なっ…」
「へ~…よく見れば綺麗な顔してるな」
「はっ、離してっ…んっ!?」
気がつけば籐夜の唇に何かの感触が……
誰に聞かなくとも至近距離に虎次郎の顔がある。
今、籐夜は虎次郎とキスしていたのだった。
そして自然な形で籐夜は椅子に押し倒され、両手は虎次郎によってふさがれてしまった。
「久々の上玉…ってところだな」
「やっ、やめて……」
「泣きそうな顔も可愛いね」
笑顔でそんな事を言われても嬉しくない。
男に押し倒されている…普通ではありえない状況なのだが、籐夜はもはや虎次郎に押し倒されていることなどどうでもよかった。
まだ癒えていない心の傷が疼く…これから自分の身に起こることに籐夜は鳥肌を立てた。
どうにかして逃げようと椅子の上で身を捩る。
しかし元々の体格の差からして籐夜に勝ち目はなかった。
「嫌だ、離せ!!!離せ、離せって!!!!止めて―――――っ!!!!!!!」
「こらっ、暴れるなっ
で!!!!!!」
「……何をしているのですか、都築君?」
籐夜が急に暴れ出し、焦った虎次郎はどうにか落ち着かせようとした時…
誰かが思い切り虎次郎の股を蹴り上げたのだった。
もちろん、あまりの衝撃に虎次郎は籐夜を掴んでいた手を離し、その場にうずくまった。
その虎次郎を上から見下し、ドスのきいた低い声で尋ねる一衛がいた。
眼尻に涙を溜めて一衛を見上げる虎次郎は口をパクパクするだけで声が出ていない。
呆れて何も言えない一衛は籐夜に目を移すと、細められていた目が一気に見開いた。
「何をしているのですか!!!!」
一衛の声に虎次郎も椅子の上を見上げると、籐夜はまさに窓の鍵を開けたところだった。
籐夜の部屋は4階。
落ちたら間違いなく死ぬであろう…
一衛は窓を開けようとする籐夜の腕を慌てて掴み、片方の手は腰にまわすと窓から離そうと体を引いた。
「離せっ!!!!!」
「っ…」
掴んでいない方の籐夜の手が振り上げられ、一衛の顔を掠めるとかけていた眼鏡が音を立てて床に落ちた。
幸い眼鏡は割れずに済んだが、気が動転している籐夜をそれほど体格の変わらない一衛が引き止めるのには無理がある。
すると、必死に窓へ向かおうとする籐夜と窓の間に反対側の椅子からテーブルを越えて虎次郎が立った。
一衛は籐夜を掴んでいた手を優しく離した。
必死になって前へ進もうとしていたので、手を離されて前に放り出される形となってしまったが、そこは虎次郎がしっかりと抱き止めた。
「驚かせたな、ごめんな~」
まるで小さい子供をあやすかのように虎次郎は籐夜の背中を擦ったり、軽く叩いた。
初めは抵抗していたものの、次第に落ち着きを取り戻した籐夜は虎次郎を突っ張っていた手を力なく下ろし、大人しくなった。
どうやら籐夜は眠ってしまったらしく、虎次郎は抱きかかえると籐夜の部屋のベッドに寝かせて戻ってきた。
椅子にはすでに一衛が座っており、厳しい表情を見せていた。
これからこっぴどく叱られることを虎次郎は覚悟した……
「都築…座れ」
「……はい」
どう考えても虎次郎が悪い。
一衛に言われた通り、虎次郎は椅子ではなく床に正座をして座った。
またもや上から一衛の視線が虎次郎に突き刺さる。
「どうしてあぁなったのか言ってもらおうか?」
「俺の…出来心で……つい」
「あぁ?!」
「…これからはしません」
「当たり前だ。ったく、俺の仕事を増やすな」
一衛はこれからの籐夜の身のことを考えると頭を抱えたくなった…
虎次郎は物事の状況をきちんと把握できる奴だ。
なので今回は未遂で終わったし、これからも籐夜に対して間違った行いをすることはないだろう…
しかし全員が話の分かる奴ではない。
一衛はそこである人物の姿を思い浮かべた―――――――――
「都築…」
「はい!!!!!!!」
「取りあえず…黒江はお前が守れ」
「…俺?」
「何か?」
「いや、だって俺…前科持ち」
「未遂だから許してやる。まぁ、まず黒江に信頼されないと始まらないから精々頑張れ」
一衛は虎次郎に厳重注意だけしておくと、目的の仕事は後ほどにすることにして部屋を出て行った。
To be continue…
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