「遅刻…だな?」
「はい…遅刻です」
職員室には学年主任の先生と籐夜のみ…
何も言うことが出来ない籐夜は深々と頭を下げた。
*******
凌と別れてから急いで学校へと向かった籐夜。
確か予鈴と同時に校門を潜り抜けたはずであった…
校門を抜ければすぐそこに校舎がある、という考えは甘かったらしい。
校門から校舎が見えないので取りあえずまっすぐ進むことにした。
5分ほど走ると目の前に建物が見えてきたので校舎だと思った籐夜は一目散にそこへ駆けていった。
しかし…そこは籐夜が目指していた校舎ではなかった。
さらに奥へと進むがいつまで経っても校舎に着く気配がない…
いい加減疲れた籐夜は途中にあったベンチに腰かけた。
「ったく…校舎どこだよ!!!」
「……どうかされましたか?」
「っ!!!!!!!」
ベンチにふんぞり返っていた籐夜はまさか声をかけられるとは思っていなく、声をかけられたことに驚いて飛び起きた。
一見不良のような身なりの籐夜だが、不良ではない。
これは声を大にして言える。
喧嘩は嫌いだ、したことないがきっと弱い。
目つきが若干悪いが、これは生まれつきだから放っておいて欲しい。
そして、日本でも有数の進学校であるこの学校で学費免除になったくらい頭はいい…はず。
「あの…?」
「すんません、迷いました!!!」
「……ふふっ」
直立不動の籐夜を不思議そうに見つめる好青年の視線に気がついた籐夜はつい大きな声で正直に告げてしまった……迷ったと。
この歳で迷子など恥ずかしすぎることに言ってから気づいた籐夜は顔を真っ赤にした。
目の前にいた好青年は少し驚いたようだが、優しく微笑むと校舎まで案内してくれるという。
籐夜は何度もお礼を言い、頭を下げると校舎へと歩き始めたのだった。
しかし…同じ制服を着ているのに不良っぽい野郎と好青年が着るだけでこんなにも雰囲気が変わってしまうものなのかと籐夜はしみじみ感じていた。
「はい、ここが職員室」
「わざわざありがとうございました。本当に助かりました」
「それじゃ…黒江君、気を付けてね?」
無事に職員室に辿り着くことができた籐夜は吐息つく。
ここまで連れてきてくれた好青年にきちんと御礼を言って別れた。
そして別れ間際に好青年が言った最後の言葉…籐夜はまた迷わないように気を付けてという意味で解釈したのだが、本当はそうではなかった。
この時、籐夜はまだ気づいていなかった……
この学校は中高一貫校の上に男子校で全寮制という閉鎖された空間であるということに――――――――
To be continue…
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