神宮寺レン(整外)と聖川真斗(病理)と愉快な早乙女病院のお医者さんたち
神宮寺の言葉が忘れられない‥‥
「病理とか、まさしくお前にピッタリだな」
「何が言いたい」
「地味だってことだよ」
それからも散々なことを言われたが、派手地味で診療科を選んだ訳ではない。
確かに解剖等の関係で病理部の場所は地下、しかし雰囲気というのは大切なことなので口うるさく綺麗にするようには伝えている。
そのお陰で医師会からもお墨付きをいただいている。
不満だ‥不満過ぎる
「聖川先生~」
お昼を食べに食堂へ足を運ぶと、既にたくさんの職員で埋め尽くされていた。
どこで食べようかとトレイを持ったまま辺りを見渡していると遠くの方から名前を呼ぶ声が聞こえてきた。
「‥四ノ宮先生」
「昨日の迅速診断、とっても助かりましたぁ~」
「いや‥‥」
「速くて的確、流石ですよ~」
場所故に面と向かって誉められることが(むしろ人と関わることが)少ないので、正直むず痒い。
でも認められていると実感できるのは嬉しい。
神宮寺にも見習ってほしいものだーーー
「ねぇ、隣いい?」
「あっ、美風先生だぁ。お疲れ様です」
「はぁ」
「お疲れのようですね」
「あいつどうにかなんない?」
美風先生の言う”あいつ“と聞いて思い浮かぶのは1人しかいない。
「神宮寺ですか」
「そうだよ、あいつのオペまじで疲れる」
「神宮寺先生のオペは色んな意味で見ごたえあるって研修医の先生言ってましたからねぇ」
「あの性格は学生の時からですのでどうにかするのは無理です」
「はぁ、そうだよな」
どんなオペをしたのか気になるところだが、四ノ宮先生は話が時々飛躍するので聞いても理解出来ないことが予測できるし、美風先生に聞けば嫌味のおまけ付きで返事が来るであろう‥考えただけでドッと疲れるので聞くことは諦めた。
「マサ~」
「一十木先生、仕事中にその呼び方はどうかと思うぞ」
「えー、マサまでトキヤと同じこと言う。だって“聖川先生”って噛みそうになるんだもん」
「慣れろ」
「そんな~‥‥あっ、林檎ちゃんからマサにはい」
最早看護師は名前で呼んでいるのか!と突っ込むことは止めにした。
そして月宮師長からの預かりものの
ファイル名に思考が止まった。
「なぁ、一十木先生‥‥”神宮寺先生、ドキッ☆マル秘ノート“ってのは何だ」
「さぁ?何だろね。取り合えず渡したから、じゃあね~」
「おい、一十木っ‥‥」
伸ばした手は空をきり、行き場を無くしてしまった。
そろそろ仕事場に戻らなければ口の達者な検査部の女性たちに何を言われるかわからない。
そしてファイルの題を見られても煩いので、自分の体に沿わせるように向きを変えた。
「神宮寺先生」
名前を呼ばれたのは自分ではないのになぜかドキッとした。
声のする方を見れば神宮寺と松葉杖をついた女の子とその親だろう三人が話を始めた。
嫌でも耳に入ってくる話を聞いていると退院の挨拶をしているようだ。
丁寧に頭を下げる女の子の頭を撫でる神宮寺の表情は見たことがないほど穏やかで、とても優しかった。
その表情にイラッとしたーーーーー
自然に歩くスピードを落としていたことに気づき、さらに歩幅を狭めて足早に立ち去った。
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「お疲れ様で~す」
「あっ‥あぁ、お疲れ様」
あの表情を思い出さないようにと仕事に集中していると気がつけば最後の職員が帰り、部屋には自分1人となっていた。
ふと力を緩めると肩が凝り、コメカミが痛い。
根を詰めすぎたようだ‥‥
大きく背中を反らせると、視界の端にファイルが見えた。
正直言うと興味深い‥‥‥‥‥
手を伸ばせば早かった。
1ページ目を開くと可愛らしい丸文字が目に飛び込んできた。
5月20日
神宮寺先生ったら患者さん耳遠いからって近すぎ!!
エロボイスだわ~☆
5月26日
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‥‥続く。