僕はココしかしらない…
でも貴方は
この世界の大きさを知っているんだ――――――――
君の翼
「あれ、姫さん達は?」
「千尋達なら荒魅玉の情報収集に村へと下りていった」
「お前は行かなかったのか?」
「…人は苦手だ。それに」
「そうだったな」
俺達は人ならざる者――――――――
人との接触をさけてきた土蜘蛛の一族…遠夜
人間から嫌われている日向の一族…サザキ
多くの民族が暮らしているこの世界でもやはりルールがある。
そのルールを乱してはならないし、乱そうとも思わない…
少数民族はそれほど弱い立場なのだ。
遠夜は現在寝床としている大きな洞穴の中で一人…
その姿を見たサザキは辺りを見渡し、少々あきれながら中へと入ってきた。
千尋の従者として共に行動して少し経つが、やはりまだ人間は慣れない遠夜は体躯のいいサザキが近づいてくると体を強張らせ、畏縮した。
「でもまぁ、こんな薄暗くて狭い場所によく居れるよな」
「僕はこの方が落ち着く…」
「この世界はもっと広いんだぜ?知りたいとか思わないのか」
「思ったこと…ない」
「なら俺が見せてやるよ!!」
「えっ」
その瞬間腕をつかまれて洞窟の外へと飛びだしていた。
目の前に見える自分よりも大きな背中…もつれる足を何とか動かしその背中を追いかけた。
少しすると森を抜け、遠夜の視界には真っ青な海が広がった。
その広さに遠夜の胸が高鳴った。
海と空の境目が分からない…遠く先までそれは続いており、左右には地平線が限りなく続いている。
今まで木々に囲まれ、視界も狭められていた遠夜には想像もできないくらいの広さだった。
この世界に“終わり”という場所はあるのだろうか?
「俺はいつか船を取り戻し、この海に戻る…誰も俺を縛れないトコにな」
「縛られない…?」
「そうだ。誰も誰かを縛られはしない、それは遠夜お前もだ」
「…」
「お前はもっと“外”を見るべきだ。世界はこんなにも広いんだぞ」
「う…?!」
表情の緩んでいた遠夜の顔が一瞬にして強張った。
サザキは耳を澄ませると、近くで人の話し声が聞こえてきたのだ。
このままではこちらに来てしまうと察したサザキは翼を広げ一気に飛び立ってしまった。
「サザキっ」
遠夜の制止もむなしく、サザキは遠夜の前から姿を消してしまった。
きっと声の許へ行ったのだとわかるが、追いかけようとしても足が動かなかった。
次第にこちらに近づいてくるのか声が大きくなってくる。
耳に響く人間の声…
体が動かない…
助けて…
「ねぇお兄さん達、いいもん持ってるじゃん。全部置いていってもらおうか?」
「ひぃ」
五人ほどのグループの後ろに降り立ったサザキは懐から夏圏(チャクラム)を取り出し、そのうちの一人の首元に押し当てた。
もちろん夏圏を見て腰を引かす者やサザキの容姿を見て驚くものもいた。
サザキとしてはいつもこうして悪さをしているので、この反応は日常だし見ていて飽きない。
その為、人から嫌われているのだが……
もちろんのこと持っている荷物をすべて置いて逃げていた人間達の後姿を見ながら、荷物へ視線を落とすと深いため息をついた。
今自分が欲しい物はこれではない……
急いで遠夜の許へ戻ると、しゃがみこんで震えている遠夜の姿があった。
そしてサザキは自分がしたことに罪悪感を感じた。
一人にするべきではなかった…
すぐさま駆け寄り、肩掛けを遠夜の肩に掛けてやると翼で隠し、サザキは遠夜を抱きしめた。
胸の中でグスグス言っていた遠夜だが、サザキの腕の中にいると分かった途端、少しずつ落ち着いていった。
「一人に…しないで」
「悪かった、もう人間は居ないから安心しろ」
「うん」
頭をなでてやり、遠夜を軽々と片腕で持ち上げたサザキはもう一度海の方を見た。
物思いにふけっているサザキの頭をつつき、顔を上げたサザキは笑みを見せている遠夜と目が合った。
「サザキ…一緒に連れてって」
「あぁ、見せてやるよ。遠夜にこの世界を」
この後、先に戻っていた千尋達が遠夜の姿がないことに気がつき探し回っていたところにサザキと遠夜が戻ってきた。
理由を問いただし、遠夜を連れ出したサザキは千尋にこっぴどく怒られたのは言うまでもない…
おしまい。
******
何だこの駄文は?!
〆最悪…orz
PR