WGPが終わって4年。
正直、豪と“恋人”という特別な存在になるとはカルロ自身思っていなかった。
豪が「どうでもいい」存在から記憶の片隅に存在し始めたのは出場停止を受けた2か月間の間。そして意識し始めたのはWGPのファイナル後のこと。始めはこの感情をなんと言えばいいのかわからなかった…愛情ほどカルロに欠落したものはなかったのだ。
(中略)
「あら、どうしたのその大荷も…ふふっゴー君に逢いに行くの今日だったのね」
「まだ続いてたのかよ」
「黙れ、おたまじゃくし」
「なっ!!!」
ボストンバックをもったカルロが現れるとジュリオが驚きながらもカレンダーに目をやると今日の数字に赤く丸印がしてあった。それが何の印か知っていたので微笑ましくカルロを見た。
ソファではルキノがふんぞり返っており、ジュリオの言葉にボソッと突っ込んだつもりだったがカルロに聞こえておりあだ名化した「おたまじゃくし」に顔を赤くして突っかかる。
「カルロ、飛行機」
「あぁ、行ってくる」
「いってらっしゃ~い!!!烈君にもよろしくね」
「ジュリオ、お前鷹羽じゃなかったのか?」
このままではルキノと喧嘩が起こりかねないと心配したリオーネがカルロの背中に言葉を投げかけると、ルキノを相手にせずカルロは玄関に向かう。その後ろをジュリオがついて行き、お見送りの言葉についリオーネは突っ込んでしまった。するとジュリオは笑いながら振り返り、懐から一枚の写真を取り出した。
「烈君も中々いい男になってるのよ~」
写真を手わされたリオーネは烈よりも豪の方をみてしまった…
「これがあのチビなのか…??」
飛行機を乗り継いで12時間。カルロは2年ぶりに日本へ到着した。
一度2年前に豪に会うため日本に来たのだが、手を出さずじまいで不完全燃焼での帰国となってしまった。
その時に皆に爆笑されたのは言うまでもない。女なら簡単なのだ、しかし豪となると易々と手が出せないのである。
出口に向かいながらカルロは「男ならガツンと一発ぶちかましてやったらいいのよ!!!」なんていうジュリオの言葉が頭の中をグルグル回り顔を真っ赤にしていた。
待ち合わせ場所は到着出口…のはずだがそこに豪の姿はなかった。飛行機の時間は事前に教えていたので迷うことはない。飛行機も予定通りに到着した…少しショックだったカルロは仕方なく豪の到着を待った―――――
しかし30分経っても豪は現れなかった。次第にカルロは心配になってくる…日付は何度も確認したので間違っていない。飛行機の時間も同様、待ち合わせ場所は豪が言ったので間違いはないはずだ。
考えられるとすると寝坊…豪らしいと言えばそれまでとなる。
刻一刻と時間が過ぎて行き、中途半端な時間に食べた機内食だけでは足りなくなりお腹がすいてくる。何か食べたい気もするが買いに行っている間に豪が来たらどうする?きっとその場でじっとしていられない質だから姿がなかったらウロウロするに決まっている。そうなればすれ違いになってしまう…そう考えると動こうにも動けない。これが豪以外だったらすでにブチ切れているところだろう。
するとカルロの耳にアナウンスが聞こえてきた。
『ローマ発、9時半着の便に乗っておられましたカルロ・セレーニ様、星馬豪様がお待ちですので至急北ウィング第二待合室までお越しください。繰り返します―――――――』
「はぁ?!」
放送を聞いて思わずカルロは大声を上げた。これはどう考えても迷子の放送である。
取りあえず豪を迎えに待合室に急ごうとしたのだがその場所が分からない。案内版を何度も見て、ようやくその場所についたのは放送があった15分後だった。
(案内版には5分って書いてあっただろ…)
決して自分が迷ったなどと思いたくないカルロは遅れたのを案内版の所為にしようと心に決めた。
そして待合室の前にはしょぼくれた豪が申し訳なさそうに立っていた。その姿が可愛いと思ってしまったカルロは笑みを浮かべると名前を呼んだ。
「ゴー!!」
カルロの声に気づいた豪は顔をあげるとカルロに向って突進し、その間にボストンを地面に置いたカルロは飛びついて来た豪をしっかりと抱きとめた。感動の再会―――といきたい所なのだが、カルロはそんな場合ではない。
「何か食いに行くぞ、腹が減って仕方ねぇ」
抱きしめたのはいいが、カルロはすぐに豪から離れて辺りを見渡しながら歩いて行き、豪は俯き加減でその後をついて行った。そしてカルロはファーストフード店を見つけて中に入った。
適当にセットを頼み、空腹を埋めるようにバーガーに食いついた。その間も目の前に座っている豪は俯いてグスグス言っている。
「ちっ、何メソメソしてんだよ」
「!?…ごめん」
「何が?!」
「俺が迷子になったことカルロ…怒ってる」
豪の言葉にカルロは持っていたポテトを落とした。いつ自分が怒ったのかカルロは空港にについてからの行動を振りかえるが特に豪に対して怒ってはいない。そうれはそうと、目の前にいる人物は何なんだと今さら突っ込んだ。
出会った瞬間、空腹の方が脳内を占領していたのではっきり言って豪をきちんと見てはいなかった。
初めて出会った4年前と2年前はさほど変わりはなかった。しかし今の豪は何だ。抱きしめた時に一瞬感じた違和感…30㌢あった身長差も縮められ、豪の顔が肩の位置となり声も男らしくなっていた。
子犬が知らない間に中型犬になってしまった気分だった…
「ったく、怒ってねぇよ」
「ほんとか?!…良かった」
相変わらず気分はコロコロ変わるが、ようやく豪の笑顔を見れてカルロは安堵した。
うるさいのが取り柄なのに、静かだと何かあったのではないかと心配してしまう。ただでさえ遠距離で会えないのだ。ましてや男同士…いつ相手が心変わりをしてもおかしくはない。
「ほら、てめぇも食べろ」
カルロは最後にと取っておいた長いポテトを引き抜くと豪の口元まで持っていった。すっかりご機嫌の豪はそのポテトに飛びつきむしゃむしゃと口だけ使って器用に食べていく。
(中略)
とうとう夜を迎えてしまった…風呂に入ったカルロは豪の部屋に入ると豪は寝る準備に取り掛かっていた。しかしどう見てもベッドしか寝る場所がない。嫌な予感がしたのと同時に豪は笑顔でカルロに言った。
「寝る場所ベッドしかないから2人で寝ようぜ」
(…拷問だろ)
嫌な予感が的中でカルロは真っ赤になった顔を見られないように俯いてそらした。その間に豪は布団の中へ入り奥へ詰めてカルロの入るスペースを開けると布団を捲ってカルロの名前を呼びながら空いているスペースを叩いた。
「カルロ~早く~」
無防備すぎる豪にカルロは己の欲望を自制させながらベットの中に入った。中は思った以上に狭く、密着しなければカルロがベッドから落ちてしまう。密着などしてみろ、どさくさに紛れて豪を襲わないとも限らない。カルロが必死に心の葛藤を行っていると豪がカルロの方へとよって来た。
「ゴーっ?!」
「へへっ、お休みカルロ」
顔を赤らめた豪は触れるだけのキスをカルロにするとカルロの胸元で眠りについた。
聞こえてくるのは豪の寝息…しかしカルロはまだ寝れずにいた。
おおおお終りが見えない(汗
始めのジュリオの会話と1つのベッドに2人で寝るっていう内容を書きたかっただけなのに肉付けしすぎた(苦笑
中途半端大好き\(>▽<)/
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